分類 刀 観賞用 樋なし
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2-1906
武州住利兼作
-Bushu ju Toshikane saku-

刃長75.8センチ 反り1.5センチ
元幅32.45ミリ 元重ね6.5ミリ
物打幅25.35ミリ 横手位置幅21.8ミリ
物打重ね4.65ミリ 松葉先重ね3.9ミリ
目釘穴1個
裸身重量771グラム 拵に納めて鞘を払った重量1,072グラム
昭和55年(1980) The latter period of Showa era
昭和56年2月12日 東京都登録
附属 腰黒蝋塗印籠刻黒石目地塗鞘打刀拵、素銅地金鍍金はばき


利兼は昭和後期に武州の地で鍛刀した現代刀匠で、公開資料には「蓬莱利兼刀匠」の名が確認され、武術家の間で実際に用いられた現代刀の作者としても記録に残っています。戦後の刀匠が美術刀剣類の製作承認制度のもとで伝統的な鍛錬技法を継承し、古名刀の美を追究すると同時に、現代に求められる健全な体配と実用性を備えた刀を鍛えた時代に活動した刀匠であり、本作にも長寸でありながら手元へ重心を置き、扱いやすさを損なわない利兼の作刀姿勢がよく表れています。表には「武州住利兼作」、裏には「昭和五十五年十一月日」と切られ、作刀地、作者、制作年月が一振のうちに揃う年紀作で、昭和五十五年十一月、すなわち西暦1980年に完成し、翌昭和五十六年二月十二日に東京都で登録されていることから、制作から登録へ至る時期を明確にたどれる点にも昭和現代刀としての確かな資料性があります。

刀身は鎬造、庵棟で、刃長75.8センチ、元幅32.45ミリという堂々たる体配を備え、元先の幅差が開いて切先が延びる伸びやかな姿には、長寸ならではの迫力と鋭利な印象が同居しています。地鉄は柾目が強く現れて地沸が付き、鍛え肌の流れを明瞭に見せる一方、刃文は湾れ調子の小沸出来で匂口は沈みごころとなり、刃中には互の目を交えて足が入り、砂流が頻りにかかることで、穏やかな焼幅の中にも絶えず変化する力強い景色を生み出しています。鋩子にも幾重もの砂流がかかって焼詰風に収まり、華やかな刃文を第一とする鑑賞用美術刀剣とは趣を異にし、粘りと折れにくさを意識した実用重視の造り込みに利兼の明確な作刀姿勢がうかがえます。裸身重量は771グラム、拵に納めて鞘を払った重量は1,072グラムで、長寸ながら重心が手元に寄っているため、手に取ると数値以上にまとまりがよく、構えた際にも安定感のある一振です。

附属する打刀拵は、鞘の腰元を艶やかな黒蝋色塗とし、印籠刻を境に胴部を落ち着いた黒石目地塗へ切り替えた「腰黒蝋塗印籠刻黒石目地塗鞘打刀拵」。端正な黒一色の中に、印籠刻の立体的な段差と、鏡面に近い蝋色塗、細かな石目地という異なる表情が静かな変化を生み、遠目には引き締まって見えながら、手元では塗り分けと表面仕上げの妙を楽しめる趣向です。黒糸を巻いた柄は白鮫皮との対照が鮮明で、縁頭には房状に集まる四弁の小花と鋸歯を備えた大きな葉からなる紫陽花図を金色絵主体で華やかにあしらい、鐔には本歌の宗典合戦図鐔から型取りして作られた写しを据え、武者や風景を立体的に表した華やかな造形が拵の力強い見どころとなっています。黒を基調とする拵全体へ金、赤銅、素銅の色彩が品よく映え、素銅地金鍍金はばきも刀身と拵を明るくつなぐ、実用本位の現代刀に鑑賞性の高い刀装を合わせた、飾っても手に取っても存在感のある構成です。

長寸で姿の整った年紀入りの現代刀に、意匠性豊かな打刀拵が一式で揃う点が本品の大きな魅力であり、刀身と刀装を一体で楽しみたい方はもちろん、昭和後期の現代刀を収集される方にもおすすめしたい一振です。鞘には鞘鳴りと僅かながたつきが認められますが、柄にがたつきはなく、現状でも観賞用として十分に楽しめ、実際の使用を想定する場合には専門職による点検と調整を施すことで、より安心してお取り扱いいただけます。